第1回 直腸脱、直腸重積、直腸瘤の新しい治療 その2(直腸脱の原因と症状)
前回から引き続き「直腸脱、直腸重積、直腸瘤の新しい治療」についてお話していきます。
今回は、主な原因と症状についてお話をしていきます。
<原因>
直腸脱は一つの原因ではなく、いくつかの要因が重なって生じるといわれています。
肛門の筋肉の弱さ、排便状況が悪いなども原因になり得ます。
<症状>
肛門から腸が飛び出してくるのが一番の症状です。腸が飛び出すことによって肛門が閉まらなくなり、便漏れが起こるようになります。また、排尿障害を起こすこともあります。
最初は排便をする時に脱出するだけですが、進行すると歩いている時や入浴している時にも出っ張るようになります。
腸が肛門の外に飛び出してしまうと痛みの原因になります。また、腸の粘膜はもろいので出血をおこしてしまいます。痛みや出血のために生活に支障をきたすことも多くあります。
直腸重積では脱出はありませんが、たるんだ直腸粘膜が肛門にフタをしたような状態になるため、便意があって息んでも便が出ないという症状がでてきます。
正確な診断には?
1.問診
いつから症状が出てきたか、排便の状況はどうかなどを伺います。また、腸以外にも、子宮脱や膣脱、膀胱脱などの症状があるかを伺います。
2.視診、触診
トイレで息むような動作をしてもらい、腸の脱出があるかを調べ、痔核(いぼ痔)との鑑別を行います。
触診では直腸瘤の有無も確認します。
直腸瘤とは、直腸と膣の間の壁が薄くなって排便する時に圧力が肛門方向だけでなく膣の方向に向かい、排便がスムーズに行かなくなる状態のことをいいます。
3.経肛門超音波検査
肛門の筋肉の損傷がないか、筋肉が薄くなっていないかを調べます。
4.肛門内圧検査
直腸脱では肛門の筋肉が弱っていることが多いため、肛門を締める力がどれくらいあるかを調べます。
5.排便造影
肛門から疑似便として、専用のバリウムを注入し、息む動作をしていただいて、便がどのように排出されるかを調べます。仙骨と直腸の固定状況や直腸瘤についても調べることができる大切な検査です。
6.大腸内視鏡検査
腸が肛門から脱出したり、戻ったりを繰り返すことによって直腸に炎症が起こる場合があり、内視鏡を用いて炎症の有無を検査します。また、大腸内に他の病変があるかどうかも確認します。
今回は以上となります。
次回は治療方法についてお話をさせていただきます。
院長 宮島 伸宜