19.医学は元々経験則から生まれてきた学問

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よく、胃の調子が悪くて下痢している、という言い方をしたり、風邪でお腹を壊すと「胃腸炎」なんて言われたりしますが、いささか乱暴な・・・というかおおざっぱな分類だな、と思ったりすることはあります。nigaoe_kitazato_shibasaburou.png

なんで胃が悪くて下痢?
胃腸炎って検査もしてないのになんでそんなことがわかるの?
しかも、胃も腸も両方炎症おこしてるわけ?
なんて、このあたりの話やあと「胃けいれん」とか、曖昧で便利な病名や状態をあらわす言葉について重箱の隅をつついても仕方ない訳で。

確かに、ちょっと胃の辺りがむかついたり痛かったりするくらいでいちいち胃カメラしてたらキリがありませんものね。
胃炎も腸炎も、今はカメラで見て確認して「こういう状態をナントカ胃炎という」って決まりは一応あるんです。


私も昨年胃の具合が悪くて胃カメラ受けましたけど、「綺麗な胃ですね。何でもないですよ」ということでした。
確かに、我ながらキレイな胃粘膜でしたけど(笑)、カメラで見て何もなくたって痛いもんは痛いですしね。

目に見えるものだけで「あなたには検査で異常がないんだから薬はあげられません」って言われても困る。

何が言いたいのかというと、目にみえるものだけを医療の基準・根拠にしすぎてはいけないなということです。
医学は元々経験則から生まれてきてるわけで、早い話、風邪を「風邪」と確定診断し証明する方法はないんです。

曖昧で、ファジーな部分は医学・医療からなくならない、無くせない。それでも一つ一つ、こういう状態を「胃潰瘍」、こういうものが見えたら「クローン病」、血液検査でこれがあれば「リウマチ」って積み重ねて、何とか客観的な形にしようとし続けていかなくてはいけないのも医学。

お腹がはる、便秘・下痢を繰り返す、排便前にお腹が痛い、という症状があれば「過敏性腸症候群」と診断をつけるのは、臨床的に言えば正しいでしょう。でもそれは、本来は除外診断でしかない。 検査で異常がないことは確認しておくべきで、でないと医学の進歩も望めない。
また、一番怖いのは、「過敏性腸症候群」だから、「常習便秘」だから、また「痔」だからといって、それだけでは「腸に病気はない」という証明にはなっていないんです。