15.レクトシール:直腸膣壁弛緩症、直腸瘤

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直腸性便秘の次はいよいよ、レクトシール。 直腸膣壁弛緩症とか、直腸瘤(ちょくちょうりゅう)とも言います。

名からはなんのことか非常に分かりにくいですが、女性に特有の排便障害(便秘)です。 簡単にいうと、肛門が拡がる大きさよりも、直腸下部が大きく拡がり過ぎる傾向がある状態です。

job_doctor_woman.pngこのため、便が固いとすっごく太くなり、肛門から出せないくらいになってつっかえてしまう。もしくはコロコロ便が、肛門の真上に落っこちてこないで、拡がった直腸の端っこに落ちてきてそこに引っ掛かり、息んでも便が肛門の周りの方へ溜まっちゃって、穴の方へやってこないから出しきれないという状態です。 女性は、骨盤内が男性より大きいため、直腸が拡がるスペースがたくさんあります。それだけでも、この症状は男性より起こりやすいんですね。

もうひとつ、これが「女性特有」と言われる理由は、直腸の後ろ側には仙骨という骨盤を支える骨があるので、それ以上直腸が拡がることが出来ないんですね。

ところが、女性の直腸前側にあるのは「膣」、つまり、空間なんです。 男性の場合は、直腸の前側には前立腺やその周囲組織があるので、それらが「強い壁」になって、直腸はそれ以上拡がることはできませんが、女性の場合、そこには薄くて弱い壁一枚隔てて「空間」になってしまうので、直腸の中の圧力が高まると、その壁が負けちゃうんですね。

「圧力」とはつまり「便」のこと。便が直腸下部/肛門上に来たときに、その便が軟らかければそのままスムーズに肛門を通って外へ出ていきます。しかし、便が固いと、便自体が直腸の壁を押して弱い方へ、弱い方へと直腸を拡げてしまう。その一番薄く弱いところが直腸と膣との間を隔てる壁なんです。ですから、その壁が便の圧力で押されると、ぐーっと直腸の前側が押されて、膣の方へ向かって便が溜まってきます。手でさわると、その肛門の前側の部分が便で押し出されるように膨らんでくることも珍しくありません。virus_hand_clean.png

ですからこの状態を見て「直腸瘤」とか「直腸膣壁弛緩症」という名前がついたんですね。それを英語で言うとrectocele:レクトシールなんです。 こういう場合、その膨らんだところをグッと肛門の方へ向けて指で押してやると、便が肛門から出やすくなります。これを「用指排便」といいますが、実はそう珍しくはありません。大体が、レクトシール自体実は全然珍しくなくて、女性の7割くらいはこのような状態であるという統計もあるくらいなんですから。