26.続続・大腸炎の原因と治療法
さて、ガンやポリープ、その他ほとんどの腸の病気では対処法・治療法はほぼ確立されていますが、ある意味、もっとも治療に難渋するのが「IBD:炎症性腸疾患」です。
主に消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患の総称で、潰瘍性大腸炎 、クローン病 の二疾患からなります。 「胃潰瘍」という病気がありますが、IBDは、「炎症によって腸に潰瘍ができる」という病気です。日本では昔から胃潰瘍は多かったんですが、IBDは少なかったので、まだまだ一般の認知度は低いのですが、最近非常に増えている病気です。
もともとが「炎症」ですから、肺炎や気管支炎と同じように薬での治療(内科的な治療)が基本です。しかし、出血が止まらなかったり、潰瘍が深くなって腸に孔があいてしまったり、炎症を繰り返したところが固く狭くなって便を通さなくなってしまうと、手術をしなくてはいけないこともあります。
症状としては、潰瘍性大腸炎の特徴は「下血」です。ひどい場合は下痢や腹痛・発熱を伴う場合もありますが、軽いものもたくさんあって、むしろ便秘の方もいらっしゃるくらい。なので、自己判断は難しいですね。一般にこの病気は、肛門の近く(直腸)が一番ひどいことが多いので、肛門科できちんと診察を受けるだけで発見されることもかなりあります。
慢性の病気とはいっても、潰瘍性大腸炎の場合はきちんと治療を受ければ一生再発しない人もいますし、軽い場合から重い場合まで、千差万別です。排便に少し血が付くだけの人から、腸全体に及ぶ人、また劇症型といって突然ひどい症状をおこし、緊急手術になる人までいます。そのほか、大腸以外の症状(関節痛や皮膚・目の異常など)を伴うこともあります。 潰瘍性大腸炎は、軽いものであればほとんど日常生活を阻害しないことも多いのですが、炎症を放置するとそこから大腸ガンが発生することもあり、またその大腸ガンも、通常のガンとは違って炎症と見分けが付きにくかったりします。
ですから、症状が軽くても放っておかずに、きちんと専門医で経過観察をし続けることがとっても大切です。 クローン病の方は、主な症状は「下痢・腹痛」です。出血はあまり認めません。 こちらは、腸とは限らず、口から食道・胃・小腸・大腸・肛門までの消化器官全てに症状(潰瘍)がでることも珍しくはありません。多いのは、小腸と大腸のつなぎ目あたりの炎症で、早期の場合は何にも症状がなく、腸の検査でたまたま発見されることもあります。
また、「痔ろう」という肛門の周りに膿がたまるトンネルができる病気がありますが、クローン病の始まりが「痔ろう」ででることもあります。この場合、すぐに検査してもクローン病がわからないこともあり、痔ろうの治療をしていくうちに腸にもクローン病がはっきりしてくるということも結構あります。
なので、ちょっと普通と違う痔ろうを見つけたら腸の検査をするというのは肛門科の常識だったりします。 軽いものでは症状が出ないで終わってしまう場合もあるようなのですが、ひとたび症状が出始めると治療が難しいこともあり、その時々の症状を軽くしながら「付き合っていく」というのが今までの現状でした。
もともとが「原因不明」ですから、腸が狭くなって便が通らなければその狭くなったところを切り取ったり、痔ろうで膿がたまって痛ければ、膿がたまりにくいように出口をたくさんつけておく、などです。 最近はかなり効く薬や治療法もでてきていて、以前よりもQOL(クオリティ・オブ・ライフ/生活の質)がかなり良くなってきてはいます。生活の欧米化に伴って増えてきている病気であり、今後の更なる治療の発展が強く望まれます。